●トランプ氏、新たに8カ国に関税通知-ブラジルはこれまでで最高の50%
トランプ米大統領は9日、新たに8カ国に対する関税通知の書簡を公表した。これまでの送付分と同じく、米国と通商合意が成立しない場合、8月から新税率が適用されることになる。
当初、世界一律10%の基本税率だけで、上乗せ関税はゼロとされていたブラジルの関税は50%の税率が通知され、7日以降に通知のあった関税率の中で最も高水準となった。
トランプ大統領はブラジル宛ての書簡で、2022年の大統領選での敗北後にクーデターを企てたとしてボルソナロ前大統領が起訴されたことを問題視し、起訴を取り下げるよう当局に要求。「この裁判は行われるべきではない。これは魔女狩りであり、直ちに終わらせるべきだ!」と述べた。
これに対しブラジルのルラ大統領は、同国に対する関税率を一方的に引き上げるいかなる措置にも、相互主義的対応定めた法律に基づき対処するとSNSに投稿。「ブラジルは独立した制度を持つ主権国家であり、他の誰からの指図も容認しない」と指摘した。
そのほか、アルジェリアとリビア、イラク、スリランカに対する関税率は30%、ブルネイとモルドバは25%、フィリピンは20%とされた。税率は総じて4月に発表された当初の関税とほぼ同水準だが、イラクに対する関税は従来の39%から、スリランカは44%からそれぞれ引き下げられた。一方、フィリピンに対する税率は17%から引き上げられた。
トランプ氏はホワイトハウスでのイベントで、今後もさらに関税通知の書簡を送る予定だとし、当初発表を控えていたブラジルについては「われわれに対して全く良い対応をしていない」と不満を示していた。
●円は145円台後半に上昇、トランプ氏が8月1日から銅50%関税と発表
10日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=145円台後半に上昇。トランプ米大統領が8月1日から銅に50%の関税を課すと発表したことを受けて、ドル売り・円買いが進んでいる。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは「報道を受けて米国株先物も下落しており、条件反射的にリスク回避でドルが売られている」と語る。あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、日本銀行の利上げ観測後退を受けて円が前日に大きく売られた反動も出ていると言う。
SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、月末に開かれる日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)について「どちらも無風だろうが、どちらかというとトランプ関税を受けた日銀のハト派傾斜の方が気にかかる」と指摘。持続的な円高進行について懐疑的にみている。
●債券は小幅安、20年国債入札への警戒や財政拡大懸念が重し
10日の債券相場は小幅安。この日行われる20年利付国債入札に対する警戒感や財政悪化懸念から売りが先行している。
三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、債券相場は参議院選挙を控えて財政拡大懸念から先物中心に上値の重い展開が続くとみる。
20年債入札については「発行額が8000億円に減額される一方、日銀買い入れオペは据え置きで、30年債よりは需給的に懸念が薄いので無難からやや弱めの結果」を予想する。
●トランプ氏の銅関税計画で駆け込み出荷加速-経由地ハワイ選ぶ動きも
銅の対米輸出を急ぐトレーダーは輸送期間を短縮しようと、貨物の経由地をハワイやプエルトリコに変更する動きを見せている。銅に50%の関税を課すというトランプ米大統領の方針を受け、利幅の大きい裁定取引の機会が失われる恐れがあるためだ。こうした取引は数カ月前から業界の潮流だった。
トランプ氏の発表を受け、ニューヨークの銅先物相場は国際的な指標価格を約25%上回る水準に急上昇した。関税発効前に銅を米国に持ち込むことができれば、トレーダーはさらに大きな利益を確保できる反面、間に合わなければ多大な損失を被るリスクがある。
銅市場は、トランプ氏が2月、銅への関税賦課につながる可能性がある調査を商務省に指示する大統領令に署名して以来、劇的な変化をたどってきたが、今回の発表でヤマ場を迎えたとみられる。米国の銅価格が急伸したことで、米国向け供給を急ぐ動きが業界全体に広がり、国内在庫は急増。一方、世界各地で供給逼迫(ひっぱく)が深刻化した。
●日本株は反落、円高や米関税の不透明感-電機や医薬品が安い
10日の東京株式相場は反落。為替の円高や日米の関税交渉を巡る不透明感が重しとなり、電気機器や機械などが下落。前日に上昇した医薬品や自動車でも利益確定売りが先行している。
半面、米半導体大手エヌビディアの時価総額が一時4兆ドル(約580兆円)を突破するなど米ハイテク株が上昇し、ディスコなど人工知能(AI)関連の一角は高い。
富国生命保険の野崎誠一有価証券部長は「自民党の苦戦が連日報じられるなど参議院選挙の不透明感が高まり、日米の関税交渉がうまくいかなくなるリスクが意識されている」と指摘。野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジストは、円高は直近の急速な円安の反動だが、輸出関連株の重しだと述べた。
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