●トランプ氏、EUとの関税交渉に応じる意向示唆-書簡は「ディール」
トランプ米大統領は14日、欧州連合(EU)を含め貿易相手国・地域とのさらなる交渉に応じる意向を示唆した。一方で、新たな関税を通知する各国・地域への書簡が「ディール」だとも主張した。
「その書簡がディールだ。ディールは成立している。新たに結ぶディールは存在しない」と、ホワイトハウスで記者団に語った。
その一方で「欧州は別のディールを望んでいる。われわれは欧州を含め、協議にはオープンだ」とも述べ、EUの交渉担当者が実際にワシントンを訪問すると指摘した。
また「文字通りすべての国・地域がディールを望んでいる。われわれは強い立場にある」などと話した。
トランプ氏は新たな関税率を通知する書簡を主要貿易相手国・地域に相次ぎ送付しており、交渉がまとまらなければ8月1日から新たな関税が発動されると述べている。
EU側の交渉を担当するシェフチョビッチ欧州委員(通商担当)はトランプ氏が書簡で30%の新たな関税を通告したことについて「実質的に大西洋間の貿易を阻むものだ」と述べ、報復措置の対象になり得ると警告した。
●債券は下落へ、米欧の超長期金利が上昇-5年CT債は無難消化の見方
15日の債券相場は下落が予想される。米国や欧州の超長期金利が上昇した流れを引き継ぎ、売りが優勢となる。この日行われる5年クライメート・トランジション(CT)利付国債の入札は無難に消化されるとの見方が出ている。
ドイツの30年債利回りは2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し3.25%と、2023年以来の高水準で取引を終えた。米30年債利回りは一時4bp上昇し5%に接近し、6月上旬以来の高水準を付けた。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、国債市場は参院選での与党敗北、石破首相退陣をメインシナリオにして動き出しており、超長期債中心に追加的な売りで金利上昇が続くことを警戒しておく必要があると指摘する。
一方、10年債利回りの1.6%は「中長期的に妙味が生まれる水準であり、買い手不在で一方的に金利が上昇する展開にはならない」とも予想。5年CT国債入札については、無難な結果を見込む。
奥村氏の新発10年物国債利回りの予想レンジは1.55-1.61%(14日は1.57%で終了)、先物中心限月9月物は137円65銭-138円25銭(同138円06銭)。
先物夜間取引で9月物は14日の日中取引終値と変わらずの138円06銭で終えた。14日の米10年国債利回りは前週末比2bp高い4.43%程度で引けた。
●円は147円台後半、米金利高でドルが買われる-米CPIを注視
15日朝の外国為替市場で円相場は1ドル=147円台後半に下落して推移。米国で関税政策によるインフレ懸念を受けて長期金利が上昇し、ドルが買われた。ただ、日本時間夜の米消費者物価指数(CPI)の発表を前にドルの上値は限られている。
三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役は、関税交渉は最終的に落ち着くとみられるが、交渉が続くことでインフレにつながると説明。海外市場では米金利の上昇に加え、「関税が不透明でユーロや円は売られやすく、ドルは底堅く推移した」と述べた。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは15日付リポートで、アジア時間に下落した米株先物が欧米時間に反発し、リスク心理の悪化が限られたことも円安圧力になっていると指摘。きょうは「米CPI次第であり、市場が65%程度織り込む9月利下げ期待がどう変化するかが注目だ」との見方を示した。
14日の海外市場で円は147円78銭まで下げ、6月23日以来の安値を付けた。米10年国債利回りは前営業日比2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い4.43%程度に上昇。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.3%上昇した。
●日本株は反発へ、米関税交渉期待や為替の円安-自動車など輸出に買い
15日の東京株式相場は反発の見込み。トランプ米大統領が貿易相手国・地域とのさらなる関税交渉に応じる考えを示唆したことや為替の円安・ドル高を受け、業績懸念が後退する。
自動車や電機、機械などの輸出関連や、鉄鋼など素材株が堅調となりそう。米金融株高が追い風となり、銀行や保険にも買いが先行しやすい。一方、米国の対ロシア制裁に石油輸出を直接抑制する措置が含まれなかったことから、鉱業など原油関連株には売りが出そうだ。
野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジスト
- 米国が発表した新関税率について、株式市場では相手国との合意かさらなる期限延長となる軟着陸が意識されている
- トランプ大統領の支持率が足元で低迷してきており、経済や株式市場に悪影響を与えるような強硬な政策は続けにくいとの見方が背景にある
- きょうの日本株は小幅高となりそう
- ただ、日本では参議院選挙での与党過半数割れによる財政拡張懸念で長期金利が急騰しており、株式相場の足かせになりかねない

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