●赤沢再生相が米商務長官と協議、「着地点探す」-8回目の関税交渉
赤沢亮正経済再生相は米東部時間21日夕、米国の関税措置を巡ってラトニック商務長官とワシントンで協議した。赤沢氏が訪米して閣僚協議を行うのは今回で8回目。
内閣官房の発表によると、協議は2時間以上にわたった。日米双方の利益となるような合意の実現に向け、改めて率直かつ突っ込んだ議論を行ったという。その上で、両国が「合意できる着地点を探す努力を精力的に続けていく」とした。
関税交渉で米国側の窓口役を担うベッセント米財務長官は先週、大阪・関西万博の米国ナショナルデーのため来日していたが、応対した赤沢氏と関税協議は行わなかった。
共同通信などによると、赤沢氏は米国到着後、8月1日までに何らかの合意を得たいという思いが日米双方にあると考えると発言。参院選の結果が米国側の交渉姿勢に悪影響を及ぼすとの懸念はないとの認識も示した。20日の参院選では、自民・公明の連立与党が非改選を含めて過半数を割り込んだ。
与党は20日投開票の参議院選挙で、非改選を含めた議席数の過半数(125議席)を割り込んだ。政権の一層の弱体化が予想される中、日米関税交渉の進展は見通せない状況にある。今後も赤沢氏に交渉役を担わせるのかを含め、体制の見直しも焦点となりそうだ。
石破茂首相は21日の記者会見で、「関税ではなく投資という考え方を基盤に、日米双方にとって利益となる合意を実現する」と改めて強調。自らも「できる限り早期にトランプ大統領と直接話をし、目に見える結果を出したい」と意欲を示した。
米国による関税措置を巡っては、自動車や鉄鋼・アルミニウムなど個別に関税がかけられている品目を除き、8月1日からは一律で25%の税率が賦課される。政府は目先の交渉期限として同日を念頭に置く。赤沢氏は20日、「何よりも国益最優先でやってきており、選挙結果が特に影響することはない」との認識を示していた。
●リスク資産に強気、大手運用会社が「トランプ・プット」に期待
複数の大手資産運用会社が、リスク資産への投資姿勢を一段と強めている。貿易問題や地政学的な緊張が続く中でも、相場上昇を追う考えだ。
インベスコ、フィデリティ・インターナショナル、JPモルガン・アセット・マネジメントなどは、米国やアジアのハイテク株や新興国資産に対する強気のポジションを強化している。トランプ米大統領が経済秩序を再び揺るがすような言動を見せているものの、土壇場で踏みとどまるとの見方が背景にある。
バリュエーションが高水準にありマクロ経済の逆風も続く中、トランプ氏への期待がリスク資産への投資を正当化する材料となっている。今や、傍観することこそが最もリスクの高い選択肢であるかのように見え始めている。
インベスコのマルチアセットポートフォリオマネジャー、ソン・チャンファン氏(香港在勤)は「市場が調整したり、米国の金利が上昇したりすれば、トランプ氏が4月と同様に一歩引くだろうという『トランプ・プット』の考え方が、市場に広く浸透している」と説明。「不確実性を乗り越える上で、運用会社の姿勢がリスク選好型に傾いていく可能性が高い」と述べた。
運用者らの見方は単なる楽観ではなく、第2次トランプ政権がもたらす不安定が最終的に経済的な現実路線に収束するという計算に基づくものだ。グローバルなファンドマネジャーにとっては、国際貿易やサプライチェーンの先行きが引き続き堅調であることを意味し、インドネシアの現地通貨建て国債や韓国の半導体メーカー、米国の成長株など幅広い資産を支える原動力となっている。
ソン氏によると、インベスコは4-6月(第2四半期)の企業決算発表を前に米国株への投資配分を引き上げた。決算内容が株価をさらに押し上げると見込んでいるためだという。
同社は米国株にオーバーウエートの姿勢を取っているものの、より有望な市場は他にあるとみている。「世界全体の動きを見る限り、欧州や新興国といった米国外の市場により強気な姿勢を取る可能性が高い」とソン氏は話した。
●対日交渉で「優先は米国民に最良のディール」-ベッセント財務長官
ベッセント米財務長官は21日、参院選の結果、自民、公明の連立与党が過半数割れとなったことが日本との貿易交渉に与える影響に関し、「われわれが優先するのは日本政府の内部事情ではなく、米国民に最良のディール(取引)をまとめることだ」と語った。
ベッセント氏はCNBCとのインタビューで質問に答えたもので、日本などの貿易相手国・地域に対する上乗せ関税発動が8月1日に迫っている点を巡っては、「協議は進展している」とする一方、「重要なのはディールのタイミングではなく質」だとの認識を示した。
また米国の対外不均衡に関し、「われわれが目の当たりにしているのは20年、30年、40年にわたって蓄積されてきた不均衡だ。そしてわれわれは、8月1日までにディールを完了させることよりも、質の高いディールを重視している」と話した。
さらに、貿易相手にはトランプ大統領が「解放の日」と呼んだ4月2日に発表した水準前後に関税率が戻る可能性があると伝えているとした上で、「そのときにまた協議を続けることができる」とコメントした。
トランプ政権は今月7日以降、各国・地域に書簡を送付し、日本からの輸入品に対する上乗せ関税率は25%と、4月2日に発表した24%から小幅引き上げ、8月1日から賦課すると通知している。
●関税交渉に託す石破首相「次のXデーは8月1日」、失敗なら責任論再燃
自民・公明の連立与党が参院選で歴史的大敗を喫した。野党が主張する消費減税を真っ向から否定した石破茂首相の続投で市場の財政拡大懸念はひとまず後退。8月1日に期限を迎える日米関税交渉に失敗すれば責任論が再浮上する可能性がある。
赤沢亮正経済再生相は21日から訪米し、8回目の関税協議に臨む。石破首相は同日の会見で、成果を得るべく、比較第1党として責任を持って詰めの協議を行っていると主張。自ら早期にトランプ米大統領と会談し、「目に見える成果を出したい」と意欲を示した。交渉が失敗した場合の責任論を問われ、「今たらればの議論をするつもりはない」と突っぱねた。
今回の与党敗北は交渉にも影を落とす可能性がある。赤沢氏は20日、「何よりも国益最優先でやってきており、選挙結果が特に影響することはない」との認識を示した。だが、衆参両院で過半数を割れた政権の閣僚との交渉に、従来と同じスタンスで向き合うかどうかは米国次第だ。
平成国際大学社会・情報科学研究所所長の佐々木孝夫氏は、「石破政権が求心力を失った今、交渉の主導権は米国にある」と指摘。「足元を見られた状態での関税協議は極めて困難で、日本にとって最悪のタイミングだ」と語った。
自動車や鉄鋼・アルミニウムなど個別に関税がかけられている品目を除き、8月1日からは一律で25%の関税が賦課される。政府は目先の交渉期限として同日を念頭に置く。トランプ氏は対日関税は発表通り発動されると強気の姿勢を示す。一方で、米側の交渉を主導するベッセント財務長官は「米国と日本双方に貿易協定は依然として実現可能な範囲にある」としている。
SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは関税交渉の成功は困難とみる。一方で、石破首相が政権維持のために大規模な補正予算を編成し、責任を問われても「当面は辞任しない」と予想。「関税交渉の失敗と大型補正がセット」だとの見方を示した。
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